最近、お子さんの便秘のことでご相談を受け、アドバイスをさせていただくことが多くなりました。食習慣やストレスなどの影響もあるのかもしれません。よい機会ですので、今日は、実際に漢方薬の中で子どもさんの便秘に良く効いた「小建中湯」のお話を。
小建中湯は、お子さんの便秘の第一選択薬です。これを、食前に温かい煎じ薬として、飲んでいただくことがとても大事です。一例として、4歳の女の子の症例をご紹介します。
もともと便秘がちで一週間出ないことも多く、出てもコロコロ便で、スッキリしない。毎回トイレが長くなってしまう。こんな症状が続いたため、小建中湯を飲み始めました。
3か月間は変化なし。その間、時に便が硬くてお尻が痛くなることもありましたが、そんなときは紫雲膏(しうんこう)という塗り薬で対応し、経過を観察します。それを、根気よく続けているうちに、6カ月で少しずつ定期的な排便がみられるようになり、9カ月でかなり改善し、服薬をやめられるようにまでになりました。
面白いことに、この漢方はお通じを改善するだけでなく、神経質だった性格が変わり、自分に自信までもてるようになり、積極性が増したそうです。
なぜおなかの調子だけでなく、心まで変化がみられたのか…?
「脳」と「腸」は、神経系やホルモンなどの情報伝達物質を通じて、お互いに指令を出し合ったり、情報を共有したりすることがわかっています。体の中のドーパミン(やる気や快感、運動調節に関する神経伝達物質)の50%、セロトニン(幸福感、心の安定に関する神経伝達物質)の90%を腸内細菌が生成しているなんて驚きですよね。
“おなかの状態が良好なら心の状態も安定する“ということです。逆に、心の状態が不安定な時におなかが痛くなったり下痢をしたりするのはよく聞く話です。
出典:農研機構
腸は「第二の脳」ともよばれ、前述の女の子の例は、「小建中湯によって腸内環境が整い、性格もポジティブに変化した」という、腸は心と密接に関係してることを表すひとつのわかりやすい症例だと思います。
恐るべし小建中湯!です。
当店では漢方煎じ薬のネット販売もしております。
※煎じ薬はエキス剤(顆粒や錠剤の漢方薬)よりも有効成分が多い、吸収しやすいなどのメリットが数多くあり、効果が得られやすいです。
2013年秋に「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」というものが作られていて、その中における漢方薬の位置づけは、「刺激性下剤による便意低下を回避したい患児、家族ないし本人が漢方治療を望む場合に用いる」とあります。要は、このガイドラインでは、漢方治療に関して大変消極的で便秘の治療に漢方を重視してないんですね。
西洋薬での治療は対症療法に過ぎず、根本から治癒しえないのに対して、漢方治療は、症例のように完治(「本治」という言い方をするのですが)が目指せます。
腸はとっても大事な身体の臓器ですから、本来の自分自身の健全な身体の状態に戻す、それが漢方の良いところです。