野生のイノシシが届いた。
四国の知り合いからのお歳暮だ。血抜きが上手な猟師さんが獲ったもので、ジビエ特有の臭みもなく、地元でも大変人気な猪肉とのこと。塩焼きか牡丹鍋をお勧めされたので、塩焼きしたものがその日の晩ごはんに並んだ。
そして事件は起こった。
私「野生のイノシシのお肉を、いただきました。感謝していただきましょー♪」
息子(15歳)「野生なら、感謝すんのかよ、別に養豚でも、養鶏でも、感謝すべきは同じじゃね?むしろ、イノシシの方が死ぬまでは自由を楽しんだだろ?自由もなにもなく、ただ食べられるために生まれてきた家畜たちにこそ感謝なんじゃねーの?」
~ 感謝すべきはどっち? ~
「野生派?家畜派?」論争の勃発である。そして、いつもと違う特別な夕飯は、微妙な空気になった。命の教育は難しい、せっかくなので薬剤師は、野生派なのか、家畜派なのかを考えてみたい。
薬剤師は、そもそも薬剤師になろうと薬学部に入った時点で職業選択の自由があまりない。企業や大学での研究職、メーカー、卸、調剤薬局、病院、ドラッグストアくらいだろうか。
そして、薬剤師として働く道を選んだとて、業界のヒエラルキーがあり、薬機法や薬剤師法などのがんじがらめの法律の中での仕事、ガラス張りの保険請求、そして、ルールを守ることが大好きな薬剤師気質と受け身体質。全くもって、野山を駆け回る自由感ゼロだ。
なので、結論、薬剤師はゴリゴリの『家畜派』なのかもしれない。ストレスフルな職種だ。ストレスは万病のもとでもある。
薬剤師は、そんな自由度の少ない職種だからこそ、雰囲気だけでもストレスフリーな職場が大事なのではないか。自由に意見が言え、アイデアを形にでき、自由な発想で患者さんを喜ばせる。そんなイノシシタイプの組織を私は目指している。
毎月の店舗ミーティングと毎日の朝礼・昼礼・終わりの会はそれを実現するための場であり、風通しのよいコミュニケーションがそれを実現させうると考えている。
野山を駆け回り、ストレスのない(なかった)イノシシはとっても美味しかった。
絵: モリ